公益社団法人 神奈川県宅地建物取引業協会 公益社団法人 全国宅地建物取引業保証協会神奈川本部

一般の方へ
不動産取引Q&A

不動産の取引には、さまざまな専門用語や法律などがあります。皆さんが毎日の暮らしを安心して過ごしていただけるよう、不動産取引に関する疑問をQ&A方式でお答えしていきます。ぜひ不動産の購入や、賃貸借の契約の参考にしてください。

住宅賃貸借(借家)契約について

  • 契約から明渡しまで(普通借家契約)の流れについて教えてください。

    契約から明渡しまで(普通借家契約)の流れ

    1. 物件(部屋の確認)

      設備の整備状況、日照(方位)、通風、交通、周辺環境、利便施設等々

    2. 入居申込み

      申込み手続書類(入居申込書等)、重要事項の全体像の説明
      重要事項説明書の説明・交付(宅建業者による媒介・代理の場合)

    3. 契約の締結

      借家契約書の締結。賃料・敷金・媒介報酬(手数料)等の受渡し、鍵の受取り(引渡し)

    4. 入居

      入居時の部屋の状況確認、契約書に定める使用方法による使用

    5. 契約の更新

      更新手続き(合意更新契約書の作成等)(特約がある場合の更新料)

    6. 契約の終了

      借主からの中途解約または期間満了による契約の終了
      (貸主と借主の合意による契約の終了)
      (貸主の「正当事由」による契約の終了)

    7. 物件(部屋)の明渡し

      明渡し時の部屋の状況確認、鍵の返却

    8. 敷金の精算

      敷金の精算手続

  • 物件(借家)探しと物件確認の際、どのようなことに気を付けるべきですか

    物件(借家)探しと物件の確認

    物件(借家)探し

    多くの情報があふれていますが、自分の希望条件にあった物件を探すことは容易なことではありません。長い期間を過ごす生活の拠点になるわけですから、契約をしてから後悔することがないようにしましょう。

    • ◆ 物件の情報は・・・宅建業者の物件案内書・賃貸情報誌・新聞広告・インターネットなど
    • ◆ チラシ等の広告には、十分目を通しましょう。
    • ◆ 広告だけで判断しないで、必ず現地で物件を確認しましょう。
    • ◆ 極端に賃料が安い等の物件には、必ず理由があるはずです。“慎重に!”
    現地の確認

    現地と部屋の確認を必ずしましょう。
    現地を見る時間帯や曜日を変えてみることも大事なことです。
    時間帯や曜日によって環境が変わることがあります。

    物件の内見

    間取り図面との照合(広さ・使い勝手等の確認)
    通風・日照(方位)
    設備の整備状況(エアコン・給湯器・ガスコンロ・照明器具等)
    共用部分の管理の状況
    事務所や店舗が同居していませんか…etc

    交通・環境

    最寄駅からの所要時間・交通量(渋滞は?)
    騒音・ばい煙etc
    周辺の建物・工場などの諸施設etc

    利便施設等

    学校・病院・官公庁・スーパー etc

    こんなトラブルが・・・
    間取り図面と実際の広さが違う。
     部屋を見ないで契約をし、入居してから部屋の広さが図面と違うことがわかり、家具が入らない等のトラブルになることがあります。
    6畳と表示されていても、4.5畳程度の広さしかなかったなど…
    事前に借りる部屋を確認していれば、防げるトラブルですね。
    下の階が、騒音を発生させる印刷会社が借りていた
     日曜日に部屋を見たために、騒音を発生させる印刷会社であることに気がつかなかったということです。
    このケースも、注意すれば事前に確認できることですね。
  • 入居の申込み(入居申込書)とはどのようなものですか

    入居の申込み(入居申込書)

    物件が気に入ると、入居申込書を提出することが一般的に行われていますが、入居申込書は、契約書ではありません。
    貸主の承諾が得られるまでは、借りることができると決まったわけではありませんので注意しましょう。
    申込手続時に提出又は提示を求められる書類等の例
    •  ◆住所を確認できる書類
    •  ◆勤務先証明書
    •  ◆収入証明書(源泉徴収票又は納税証明書)
    •  ◆学生証等
    連帯保証人が必要な場合
    •  ◆連帯保証人の印鑑証明書
    •  ◆連帯保証人引受承諾書
    •  ◆収入証明書も併せて求められることがあります。

    *借受希望者に対する戸籍謄本(抄本)の提出や本籍地の記載等の要求はしないよう厳しく指導されています。

    こんなトラブルが・・・
    預り金について
     借家契約の締結に先立ち、申込金・申込証拠金・予約金・交渉預り金等の名目で、預り金を求められることがあります。この預り金の返還をめぐってトラブルが見られます。
    預り金は、成約しなかった場合には返還されるべき性格のお金です。
    預り金は、借主の意思確認の意味合いが強く、簡単にキャンセルされることを避けるために申込証拠金等の名目で預っているものと思われます。
    名目のいかんを問わず、借主は安易に預けないようにしましょう。
    入居申込書の提出について
     借主(借受希望者)は、いくつかの物件を比較検討中でありながら、とりあえず「入居申込書」を書くというようなことはやめましょう。
    参考条文 宅建業務に関する禁止事項 宅建業法施行規則第16条の12第2号
    宅地建物取引業者の相手方等が契約の申込みの撤回を行うに際し、既に受領した預り金を返還することを拒むこと。
  • 連帯保証人制度とはどのような制度ですか?

    連帯保証人制度

    連帯保証人の責任

    賃貸借の連帯保証人は、貸主に対する借主の金銭的債務を保証するものです。具体的には、賃料の支払いや建物を破損したときの修繕費等を借主が履行しない場合に、借主に代わって支払う責任を負います。
    しかし、契約終了時の建物明渡し等の義務を借主が履行しない場合、建物明渡債務までは保証人が代わって実現することは出来ませんが、家賃相当額の賠償責任は負うこともあります。

    連帯保証人についての判例

    判例では、契約が更新された後も連帯保証人の責任を認めています。一般に連帯保証は主たる債務が消滅すれば連帯保証も消滅します。賃貸借契約の場合は更新制度があるため、契約に期限があっても貸主は正当事由がなければ更新拒絶できないので契約は継続します。従って、連帯保証債務は更新(合意更新・法定更新)後にも及ぶことになります。

    連帯保証人に変わる制度

    連帯保証人を立てられない場合には、「賃貸保証制度」を利用することができます。賃貸保証制度とは、賃借人が保証会社(家賃債務保証会社とも呼ばれる)と保証委託契約等を締結することにより、賃借人の賃料等の金銭債務の支払いが滞った時に賃借人に代わって保証会社が当該債務を負う仕組みです。賃貸人または賃借人が保証料を負担することになるので、十分な説明と賃借人の承諾が必要となります。
    一般的には、連帯保証人には身元引受人の意味合いがあるが保証会社にはないので、賃借人が高齢者等の場合には別途身元引受人を追加する場合があります。

  • 重要事頂説明とはどのようなものですか?

    重要事頂説明とは

    重要事項説明書記載項目

    ☆重要事項説明書に記載される主な内容は、次のようなものです。

    1. ① 物件の表示(物件の所在・構造・面積等)
    2. ② 登記簿に記載された事項(所有者の氏名・住所、抵当権等の有無等)
    3. ③ 設備の整備状況(台所、浴室、便所その他の設備等)
    4. ④ 石綿使用調査の内容及び耐震診断の内容
    5. ⑤ 契約の期間及び契約の更新に関する事項
    6. ⑥ 利用の制限に関する事項(使用目的、使用規則等)
    7. ⑦ 契約の解除、損害賠償の予定に関する事項(契約の解除予告期間等)
    8. ⑧ 契約の終了時における金銭の精算に関する事項(敷金等の精算)
    9. ⑨ 管理の委託先及び管理形態
    10. ⑩ その他、法令の制限等

    *このように、重要事項説明書にはその名のとおり、重要な事項が記載されています。
    物件の状況や設備の整備状況等について説明を受けた内容は、現地で確認しておきましょう。

    抵当権等の登記のある物件を借りるとき

    一般に、建物はお金を借りて建てていることが多いことから、貸借物件に抵当権や根抵当権がついていても特別なことではありませんが、そのような抵当物件を借りた後にその建物が競売されたら、借家人はどうなるのでしょうか。
    法律の改正により、契約が平成16年3月31日までに締結されたものか、同年4月1日以降に締結されたものかにより異なります。

    ☆平成16年3月31日までに契約が締結がされている場合
    従前の法律が適用され、契約期間が3年以内の短期賃貸借であれば、競売された場合でも、短期賃貸借保護の制度により契約の残りの期間は住むことができます。また、敷金の返還も買受人に対して求めることができます。
    ただし、抵当権がついているだけでなく差押登記までなされた物件を借りたときは、競売の買受人から明渡しを求められたら明け渡さなければなりません。
    ☆平成16年4月1日以降に契約を締結した場合
    競売の買受人から、明渡しを求められると、借家権の主張は認められず、借家人は6か月以内に建物を明渡さなければなりません。また、敷金の返還は買受人に対して請求することはできず、元の所有者に対して求めることになります。
    〈参考条文〉
    民法第395条 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(「抵当建物使用者」という)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から6か月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
  • 契約の締結と入居(鍵の受取り)についてどのようなことに気をつけるべきですか?

    契約の締結と入居(鍵の受取り)時の注意点

    契約の締結

    契約書は、その内容をよく確認したうえで記名・押印するようにしましょう。
    また、特約がある場合、違法・不当な条項でなければ有効ですので、その内容をよく確認しましょう。

    入居
    カギの受取りの際、借主は、媒介業者又は貸主(できれば両者)立会いのもとで、
    部屋の現状を確認のうえ、「入・退去時の確認チェックリスト」を作成するようにしましょう。
    貸主側の立会いができない場合でも、借主だけででもチェックリストを作成し、
    そのうえで部屋の現況写真(日付入り)も撮影しておくと良いでしょう。
    借主・貸主・媒介業者(管理会社)は、お互いに協力して、後日のトラブルを回避するために、
    入居時に物件の確認をするようにしましょう。
  • 敷金・礼金・共益費・駐車場料金等はどのようなものですか?

    敷金・礼金・共益費・駐車場料金等とは

    敷金

    民法第316条、第619条に規定があり、借主の債務を担保する目的で、貸主に提供する預け金銭のことです。担保されるものは、家賃の不払いや賃借物に対する損害等の債務です。退去時に債務が残っていなければ、敷金は全額返還されることになります。敷金を返してもらうためには、借主は先に建物を明け渡さなければなりません。敷金が返還されないからといって、借主は建物の明渡しを拒むことはできません。
    保証金という名目の場合がありますが、通常敷金と同様のものです。(店舗・事務所の賃貸借の場合には、保証金という名目が多いようです。)

    礼金

    法律的な根拠はありません。経済的な慣行です。-度払ったら返還されないので、家賃の前払いであると考えられますが、特に額が大きくて、内容を定めていないときは、権利金に準じたものとも考えられ、いくつかの見解があります。

    共益費

    賃貸マンションやアパートなどの玄関ホール、廊下、エレベーター等の共用部分の光熱費、上下水道使用料、清掃費等日常の管理に必要な費用のことです。実際に支払われる光熱費等の実費相当額を概算して、世帯数等で按分する形で、貸主又は管理会社に家賃と一緒に支払うことが多いようです。

    駐車場料金

    車を所有している場合には駐車場のことも考慮しなくてはなりません。マンション等でその施設の中に駐車場があっても、建物の賃貸借契約に含まれているとは限りません。駐車場のスペースを誰が(どこが)所有し管理しているのか、建物の専有部分の賃貸借契約に含まれるのか、別の契約になるのか、抽選等により借りることができるのか、事前に確認が必要です。
    重要事項説明書や契約書には「付属設備」の項目の中で、通常は駐車場の「有・無」あるいは「含む」「含まない」に○を付けるようになっていますので、よく確認することが大切です。

    火災保険

    火災保険等への加入が契約で義務付けられている場合があります。加入する保険の内容については必ず確認しておきましょう。

  • 契約期間と契約の更新について詳しく教えてください

    契約期間と契約の更新について

    合意更新と法廷更新

    居住用の賃貸借契約の期間は、一般的には2年としているものが多いようです。契約期間の満了による契約 の更新は、双方の契約継続(更新)の合意により更新手続が行なわれるのが通例です(合意更新)。特段の更新手続がなされなかったときは、従前の契約と同一条件で更新されたものと見なされます(法定更新)。契約の当初に更新する旨をあらかじめ約束する更新の方法もあります(自動更新)。

    *法定更新された場合は、その後は期間の定めのない契約となります。期間の定めのない契約は、いつでも解約の申入れをすることができることになっています。もっとも、貸主からの解約には、「正当事由」等一定の要件が必要になります。

    「定期借家契約」の場合は、契約期間の満了により契約は終了し、契約の更新はありません。双方が合意すれば、新たな契約(再契約)を締結することができます。その再契約が、宅建業者の媒介による場合は、媒介業者に「重要事項説明書」の説明義務等が生じるとともに、借主には再契約に伴う媒介報酬(手数料)等の諸費用が発生しますので、事前に確認しておきましょう。

    更新の拒絶

     契約期間の満了に際し、貸主より更新を拒絶される場合がありますが、貸主が更新を拒絶するには、「正当事由」等一定の要件が必要になります。
    その「正当事由」には、厳しい要件が課されています。

    「正当事由」
    借地借家法が定める判断基準は、次のとおりです。

    • ①貸主及び借主が建物を必要とする事情(基本となる判断基準です。)
    • ②賃貸借に関する従前の経過
    • ③建物の利用状況
    • ④建物の現況(建物の老朽化等)
    • ⑤貸主の立退料等の提供

    * ⑤は、補完的な事由とされています。①~④の正当事由がある程度具備されていなければ、高額の立退き料の提供がなされても、正当事由が具備されたことにならないと解されています。

    更新料

    契約の更新に際して、契約更新(合意更新)の対価として、借主から貸主に支払われるお金ですが、特約でその旨が定められている場合を除いて、更新の際に当然に支払わなければならない性格のものではありません。

    法定更新の場合において、更新料を支払う必要があるか否かについて争いのあるところですが、更新料を支払う旨の特約があれば、支払わなければならないでしょう。

    更新に伴う労務報酬料

    合意更新する場合に、(更新料とは別に)関与する業者から更新手続にかかる労務報酬として手数料を請求されることがあります。一般には、関与する業者は貸主から委託を受けて更新事務を行うものですから、その労務報酬料は貸主が負担すべきものでしょう。

    ただし、借主が、貸主との交渉や更新事務を業者に依頼した場合などでは、その費用の負担が発生することもありますので、契約の更新の際に確認しましょう。

    こんなときは・・・
    家主より契約の更新はしないといわれたが・・・
    契約終了の6カ月前に、貸主より、自分の息子夫婦を住まわせるので、契約の更新はしない旨の通知がきました。更新を希望しているのですが、出ていかなければならないのでしょうか。
    貸主が更新を拒絶するには「正当事由」が必要になりますので、「貸主の息子夫婦を住まわせるため」が正当事由になるか否かということになります。
    裁判所は、貸主が高齢で子供世帯に面倒を見てもらうために同居を希望しているなど、貸主の必要性が極めて高い場合はそれだけで正当事由を認めていますが、多くは立退料の支払を命じています。また、他に建物を所有する等裕福な貸主の場合は正当事由として認められていません。このように貸主と借主のいずれが居住する必要の度合が高いか否かは、重要な要素となります。結局、本文にある判断基準に基づき、総合考慮され正当事由になるか否かが決定されるのです。

    参考条文 建物賃貸借契約の更新・解約・更新拒絶等の要件・定期建物賃貸借

    借地借家法第26条
    ①建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。
    ただし、その期間は、定めがないものとする。
    借地借家法第27条
    ①建物の賃貸人が賃貸借の解約を申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6月を経過することによって終了する。
    借地借家法第28条
    建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
    借地借家法第38条
    ①期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。
    (後段略)…
    借地借家法第30条
    この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
  • 借主からの退去の申出・貸主からの解約の申入とはどのようなことですか?

    借主からの退去の申出・貸主からの解約の申入とは

    借主からの退去の申し出

    期間の定めのある契約では一方的に解約することはできませんが、賃貸借の契約では契約書面に借主からの解約権を認める条文が入っていることが一般的ですので、まず契約書面を確認しましょう。
    違約金の規定や、一定の期間前までに解約の申出をするように書かれていれば、借主はそれに従って期間の途中でも退去することができます。学生専用アパートなどでは、次の入学時期まで入居者を見つけることが難しいというような諸事情から、契約書に期間途中の解約権が盛り込まれていない場合もありますので、そのようなケースでは貸主側との話し合いが必要になります。

    1.従来型賃貸借契約の場合
    *期間の定めのある質貸借契約
    期間満了による借主の退去は、契約書に書かれた期間前までに申出れば、契約は終了します。
    解約権を留保する特約を定めた契約であれば中途解約は可能です。(民法第618条)
    *期間の定めのない賃貸借契約
    賃貸借の期間を定めなかったときは、貸主・借主のどちらからでもいつでも解約の申入れができます(民法第617条)。期間の定めがある契約の場合でも、法定更新されると契約期間の定めがない契約となり、民法の適用となります。借主はいつでも退去することができ、建物の賃貸借契約は、解約の申入れから3か月経過後に終了します。
    *借主から貸主への退去の申出期間
    貸主には次の入居者を探す期間が必要ですので、契約書面には「借主は一定の期間前までに申出をする」旨の解約 の予告期間が記載されています。標準契約書で1か月前になっていますが、一般の契約書の中には、2か月以上 前になっているものもあります。直前の退去の申出では退去後でも家賃を相当分払わざるを得ないケースもありますので注意が必要です。
    2.定期借家契約の場合
    建物の種類 事業者用建物賃貸借 居住者用建物賃貸借(床面積200㎡以上) 居住者用建物賃貸借(床面積200㎡未満)
    期間満了 終了 終了 終了
    途中解約 できない できない できる(※)
    建物の種類 事業者用建物賃貸借
    期間満了 終了
    途中解約 できない
    建物の種類 居住者用建物賃貸借(床面積200㎡以上)
    期間満了 終了
    途中解約 できない
    建物の種類 居住者用建物賃貸借(床面積200㎡未満)
    期間満了 終了
    途中解約 できる(※)

    (※)転勤、療養、親族の介護その他やむを得ない事情により、借主が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、解約の申入れをすることができる。解約の申入れの日から1ヶ月経過することにより契約は終了する。

    貸主からの解約の申し入れ・更新拒否(正当事由)

    従来型の建物の賃貸借契約では、貸主が更新拒絶をするには借主への通知と正当事由が必要です(借地借家法第28条)。

    1. 1.① 期間の定めがある場合には、期間満了の1年前から6か月前までの間に、貸主は借主に対して、更新を拒絶する
    2.   旨の通知をしなければなりません。(同第26条第1項)
      ② 期間の定めのない場合及び1年未満の期間が定められている場合(同第29条)には、いつでも解約の申出をする
    3.   ことができます。解約となるのは6か月後になります。(同第27条第1項)
    4. 2.どちらの場合も貸主に正当事由が必要です。貸主の自己使用としての必要性と、借主の賃貸物件の必要性等の諸事情
    5.  が考慮され、なかなか認められないとされています。
    6. 3.1.2の要件が揃い、契約期間が満了しても、借主が引続き建物を使用している場合には、遅滞なく異議を述べなくて
    7.  はなりません。

    以上3つの要件が揃わなければ、貸主が更新拒絶をしても、契約は法定更新され、立ち退く必要はありません。

    正当事由とは

    社会通念上、賃貸物件の明渡しを認めることが妥当と言えるような理由のことです。

    • ① 貸主及び借主のどちらがより建物の使用を必要としているか
    • ② 賃貸借に関する従前の経過・契約時点や入居中の状況・家賃の支払状況・権利金や更新料等の授受の有無や金額
    • ③ 建物の利用状況
    • ④ 建物の現状:老朽化、防災上の危険性、周辺地域の土地の利用状況等
    • ⑤ ①~④間での補充としての立退き料(注)の提供
    • ⑥ 其の他 貸主の信頼関係を損なうような契約違反行為

    以上のような様々な事情、双方の利害関係などを総合的に考慮して判断されることになります。

    (注)立退き料について

    立退き料を払えば立退き要求できるものではありません。平成4年8月に施行された借地借家法では、正当事由が十分でない場合に、立退き料で補完することにより、貸主からの更新拒絶や解約を認めるという考えが盛り込まれました。立退き料の金額に相場があるわけでなく、貸主・借主双方での話し合いで決められることになります。

    算定の基本要素

    • ・移転の実費(引越費用、敷金の差額分、家賃の差額分)
    • ・建物を使用していたことで得ていた経済的な利益の損失分
    • ・営業用物件の場合は立退きで生じた営業上の損失補填額期間の定めのある契約では一方的に解約することはできませんが、賃貸借の契約では契約書面に借主からの解約権を認める条文が入っていることが一般的ですので、まず契約書面を確認しましょう。
  • 契約の終了と明渡しについて詳しく教えてください。

    契約の終了と明渡しについて

    契約の終了により貸主にカギを返還し、部屋の明渡しをすることになります。
    それとともに、預けてある敷金の精算をしてもらうことになります。敷金は、家賃の滞納や精算されるべき債務等がなければ、返してもらえます。
    借主の不注意等による損傷・破損などの修復義務がある場合には、修復に要する金額が確定した時点で精算されることになります。(その場合、精算までには相応の日数がかかるようですので、目安を確認しておきましょう。)

    明け渡し

    全ての荷物を搬出後、清掃のうえ、明渡しを行ないます。ゴミ等の残置物がないようにしましょう。
    そのうえで、貸主・借主・業者三者立会いで入居時に確認した「入・退去時の確認チェックリスト」に基づいて、入居中に借主が壊し汚した箇所があるか、あればその範囲はどの程度かについて、退去時に確認をしましょう。
    カギは、借主の負担で作成した合カギも含めてすべて返却しておきましょう。

    貸主側の立会いができない場合は、(入居時と同様)借主はチェックリストを作成し、退去時の写真を撮影(日付入り)しておくと良いでしょう。

    敷金の精算は、借主に損害賠償等の債務がある場合は、後日、貸主より見積書等が提示され精算されることになります。

  • 退去時の敷金返還と原状回復について詳し教えてください。

    退去時の敷金返還と原状回復について

    住宅の賃貸借契約において最も多いトラブルは、退去時の敷金の返還と原状回復義務に関するものです。
    敷金は、家賃の不払いや建物破損等借主の債務を担保する目的で契約時に預け入れる金銭ですが、退去時に債務が残っていなければ全額返還されます。
    しかし、貸主と借主では利害が相反する立場にあり、建物の使用状況をめぐりとかくトラブルになりがちです。昔のように大家・店子という人間関係は薄れ、貸主は不動産業者の仲介に任せ、入居から退去までお互いに一度も顔を会わさないことも珍しくありません。また、一般的に借主はきれいな物件を希望するようになったために、貸主は少しでも高く貸すために、常に費用をかけて物件を改修していなければならないという事情も、トラブルが増加した原因でしょう。

    原状回復をめぐるガイドライン

    このように賃貸住宅の退去時の原状回復をめぐるトラブルが多発していることから、国土交通省住宅局は、平成10年(財)不動産適正取引推進機構に委託して、「原状回復をめぐるガイドライン」を作成しました。
    このガイドラインでは、①「民間住宅における賃貸借契約は、契約自由の原則に基づくもので、民法、借地借家法等の法令の強行規定に抵触しない限り、その内容について行政が規制することは適当でない。」とし、また、②このガイドラインは「その使用を強制するものではなく、原状回復の内容、方法などについては、最終的には契約内容、物件の使用状況等によって、個別に判断、決定されるべきものである。」としています。

    <原状回復義務の基本的な考え方>
    建物の損耗は次の3区分が考えられます。

    • 1.建物・設備等の自然劣化・損耗(経年変化)
    • 2.借主の通常使用により生ずる損耗など(通常損耗)
    • 3.借主の故意・過失、善管注意義務違反、其の他通常の使用を超える使用による損耗等

    特に約束のない場合は、1.2については、これらの経費はすでに家賃に含まれていると考えられますから、借主に請求できないとされています。3については、借主に原状回復義務があり修補・修繕費用を負担する必要があります。結局、「次の入居者を確保する目的で行う設備の交換、化粧直しなどのいわゆるリフォームは、1.2の損耗等の修繕であり、貸主の負担すべき費用」であるとしています。

    特に約束のない場合は、1.2については、これらの経費はすでに家賃に含まれていると考えられますから、借主に請求できないとされています。3については、借主に原状回復義務があり修補・修繕費用を負担する必要があります。結局、「次の入居者を確保する目的で行う設備の交換、化粧直しなどのいわゆるリフォームは、1.2の損耗等の修繕であり、貸主の負担すべき費用」であるとしています。

    最高裁判決(平成17年12月16日)により、賃借人の原状回復義務の判断基準が示されました。通常損耗は、原則として賃貸人の負担である。ただし、通常損耗について賃借人に負担させる場合には、賃貸借契約自体に具体的に明記されているか、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を認識して、それを合意の内容としたものと認められる特約により明確に合意されていることが必要である。

    埼玉県・千葉県・神奈川県各県土整備部長の通知「建物賃貸借の重要事項説明等について」
    (平成16年9月10日)では、重要事項説明において、原状回復費用として敷金が充当される予定があることを説明するときは、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(改訂版)」を参考に、ガイドラインで示す賃借人の負担の範囲を超える特別な負担を課す特約を付す場合、その特約の具体的な内容を説明しなければならない。
    また、賃借人に特別な負担を課す特約の要件として ①特約の必要があり、かつ、暴利的でない等の客観的、合理的理由が存在すること ②賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること ③賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること、としています。

住宅の売買契約について

  • 不動産を購入する際のポイントについて教えてください。

    不動産を購入する際のポイントについて

    1.購入予定の不動産を知る
    ①重要事項説明書で確認する

    取引を不動産業者(以下「宅建業者」といいます)が媒介(仲介)するとき、又は売主のときには、その関与する宅建業者は、必ず、物件の内容(所有者、所在、大きさ、権利関係、物件の状況等)や取引の条件などを記載した「重要事項説明書」を作成して、宅地建物取引士が説明しますので、この重要事項説明書により購入予定物件、購入条件等の詳細な内容を知ることができます。
    しかし、購入者にとっては重要な購入の条件・動機であっても、法律上は説明事項として明示されていない事項もありますので、購入条件や動機はあらかじめ依頼する宅建業者に明確に伝えておきましょう。そのことは、関与する宅建業者が説明すべき重要な事項になる場合が多いと考えられています。

    ②自分でも調査・確認をする。

    周辺にゴミ焼却場・工場・カラオケ店など、どのような施設があるか、騒音は出さないか、悪臭はしないかなどの周辺環境は、容易に調べられるはずです。重要事項説明書は万能ではありません。説明を受けるだけではなく、しっかり調査し確認することが必要です。

    2.契約条件を知る

    売買価格は?支払時期.方法は?手付金は?引渡しの時期は?付帯設備は?
    取引をするにあたっては、売主と買主間の契約条件を決めます。この契約条件は、購入する物件により決めておくべきことも様々です。通常、関与する業者が、契約条件を定めた契約書の(案)を作成しますが、契約に当たっては、自分でその内容をチェックし確認する必要があります。“知らなかった・わからなかった”などは 通用しません。また、口約束は否定されることがあると覚悟することです。

    3.契約の判断をする

    売主と契約条件について、合意できたら、いよいよ契約を締結します。
    調印する前に、いまいちど契約の条文を確認し、自分の責任で契約の締結をします。

    ★売主の義務と買主の義務

    売主・買主双方は、契約書で約定したそれぞれの義務を履行することになりますが、売主の義務は、買主に対して物件を引き渡し、完全に所有権を移転することであり、一方、買主の義務は代金全額の支払をすることです。従って、買主が物件を購入するにあたっては資金計画が最も重要なこととなります。契約で約束した支払日に代金を支払うことができるように準備しなければなりません。

    4.契約解除の方法を知る
    ①解除をする
    契約後に事情が変わり契約を解消したいときは、手付を放棄して契約を解除する手付解除、予定していた融資が受けられなくなり契約を解除するローン利用特約による解除、その他合意解除などがあります。
    ②解除される
    売主の手付解除、買主が契約の義務を履行しないことによる違約解除などがあります。
    ③解除による損失
    契約の解除により、手付金が戻らなかったり、違約金・損害賠償の請求を受けるなどの大きな損失を受けることがありますので、注意と覚悟が必要です。

その他

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